「好きだよ、まゆり」
スマホ用のゲームアプリ『ハートを教えて』。

三人いるヒロインから好きな一人を選んで、その子と仲良くなっていく恋愛ゲームだ。

多分、どちらかといえば男性向け。

でも私は女ながらにハマっていた。


ヒロインの一人『まゆり』。

明るくて、真面目で、ちょっとだけ天然。

ああ、本当にゲームキャラだなぁと感じる性格だが、可愛くて仕方ない。


朝起きたらアプリを起動してまゆりと会話して

家では夜寝るまでまゆりと仲良くなるためアレコレ頑張る。

そんな毎日。


暗い?きもい?寒い?

そんなこと自分が一番わかってる。

でもね今の私はこれが楽しい。一番幸せ。

現実よりもずっと素敵なんだ。



「よっしゃ!レアアイテムの誕生石のリングゲット!これでまゆりをデートに誘えるー」


夜。

自分の部屋にこもってゲームに勤しむ私。

今週は期間限定で行われる特別なゲームイベントがあり、いつも以上に燃えている。

少し苦労したけれど目当てのアイテムを手に入れることが出来た。


「よし、それじゃあさっそくー」

(あきら)ー!話があるの。降りてきなさーい」

「!」


ほくほくしていたら、一階から私を呼ぶ母親の声。

何だろう。

無視したいけど、後々面倒だし。

「はーい……」

ため息をつきながら部屋を出た。



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