「好きだよ、まゆり」
「すみませーん」


真由理くんのレジに女の子が並ぶ。

うちの学校の制服を着ている。

けど見たことない子なのでおそらく他学年だろう。

……そしてバレー部ではない。


女の子は一冊の雑誌をレジに置いた。

女性向けの芸能情報誌で、表紙はいつぞや話題に出たシュースタだ。5人のイケメンが写っている。


確かマユリって子がいるらしい。古市マユリだっけ。

どれだ?真ん中の黒髪か?それともやたら胸元が空いてる金髪か?

結局あれから調べてないのでわからない。


まあ。でも……

古市マユリは、私の好きな可愛いまゆりじゃないからな。

ああ、やばい。ゲームしたくなってきた。

まゆりに会いたい。

ポケットに入れたスマホに布越しに触れる。

さすがに仕事中だからなにもしないけど。


「ありがとうございました」


真由理くんの無機質な声に我に返る。

女の子が雑誌を抱えて出ていくところだった。

しまった。ぼうっとしていたみたいだ。


「…今の制服、S女子校っスよね。確か辰己さんもS女でしたよね」

「え、はい。そうです……」

「ここS女近いから、よくS女の子来るっスけど、なんか知り合いとか来たら嫌じゃないっスか?恥ずかしいっつーか」

「………そうかもですね。てか、それは真由理くんもですよね」


真由理くんが通う男子校もここから近かったはずだ。


「なんつーか、俺は慣れましたから。あ、ちょっと飲み物の補充に行ってきます」


真由理くんはそう言ってレジを出て、店の奥のドリンク売り場の裏に行った。

レジは私一人になったが、今は客も少ないから大丈夫だろう。
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