岐阜のケーキ屋と車椅子少年。

私は、亜美ちゃんのそんな姿に心が揺れた。
自分のことしか考えてなかった私と違い亜美ちゃんは、
相手のために頭を下げていた。
それは、なかなか出来ることではない。

「頭を上げて……亜美ちゃん。
私も……亜美ちゃんと同じだよ。翔馬君には、
頑張ってほしい。だから私も応援する」

改めて考えさせられた。そうだよね。
彼女である私が背中を押してあげないとどうするんだ。
翔馬君は、今一生懸命頑張っている。
だから私も翔馬君を応援しなくちゃあ……。

「本当……?」

「うん。一緒に翔馬君を応援しよう」

私がそう言うと亜美ちゃんは、ニコッと
笑顔を見せてくれた。
亜美ちゃんは、ちょっとキツい性格だと思ったが
根は、いい子なんだと思う。表現が素直なだけで
もしかしたら、これから仲良くなれるかもしれないと
私は、そう思った。

そして亜美ちゃんと別れると着替えて
私は、真っ直ぐショコラに向かった。バイトと
翔馬君に気持ちを伝えるため。

ショコラに着くと翔馬君に思いをぶつけた。
ちゃんとコンテストに前向きに頑張った方がいいと
私のことより自分の夢を優先してほしいと。
溜めていた気持ちもぶちまけるから途中で自分は、
何を言っているのか分からなくなったりしたが
それでも気持ちを伝えることは出来た。
翔馬君は、驚いていたが……。

「菜乃の気持ちは、分かったよ!
そうだよな……自分の夢を叶えないとな」

「うん。私応援する。絶対に1番になれるよ!!」

だって翔馬君は、才能あると思うから。
だから思う存分頑張ってほしいと思った。
それから2人で話し合った。
自分には、何が足りないのかとかコンテストに出す
ケーキのアイデアとか
夢や希望をいっぱい詰まったケーキを作ろうと。

「やっぱり中身の部分は、こうムースみたいに
甘くて濃厚にして……切った後にうわってなるのが
いいよな。すげぇ食べたくなるし」

「そうだね。私もそれがいい。
ケーキにムースって最強な組み合わせだし」

「でも……それって良く店で見るやつなんだよな。
インパクトが足りない……」

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