岐阜のケーキ屋と車椅子少年。
見事に完成した。
凄い……これなら優勝も間違いないだろう!!
全員完成するとそれぞれ審査員の人が味見をする。
この瞬間は、ドキドキして手から汗が出るようだ。
味見が終わると審査員の人達が話し合い
そして審査発表をされた。下から順を呼ばれる。
まだ翔馬君の名前は、呼ばれない。
大丈夫。きっと優勝しているはず……。
私は、祈るように聞いていた。そして大賞は……。
『大賞は、10番・横山翔馬さんです!』
な、名前を呼ばれた……。
私は、嬉しさで身体が震えてきた。
やったよ……翔馬君。
夢にまで見た大賞だ。これで翔馬君は、留学が出来る。
「良かったわね。菜乃ちゃん」
「はい。嬉しいです……」
美紀子さんに言われ私は、涙を流しながら喜んだ。
これでいいんだ……これが翔馬君の夢になる。
私は、そう思っていた。
しかし現実は、そう甘くはなかった。
翔馬君達とお祝いのパーティーをしたり
賑やかにやっているとスマホの着信音が鳴った。
翔馬君のお母さんだったらしく電話に出ていた。すると
叔父さんを呼んで代わってもらっていた。
するとなにやら深刻そうな表情になっていた。
そして受話器を置くと深いため息を吐いていた。
翔馬君のお母さんは、泣いていた。
一体どうしたのだろうか?
すると叔父さんは、翔馬君のところに行く。
何だか嫌な予感がする……。
「翔馬。落ち着いて聞いてくれ。
お前の留学の話は、取り消しになった」
えっ……?
その嫌な予感は当たった。
「な、何でだよ!?俺は、大賞を取ったんだぞ?
そうしたら理由が……まさか……車椅子だからか?」
ハッと気づいた翔馬君は、そう言った。
美紀子さんも叔父さんも何とも言えない表情になっていた。
そして叔父さんは、小さく頷いた。
「あぁ……そうだ。今、運営から連絡が来た。
フランスの有名店にデータを送り報告をしたら
そこのオーナーが難色を示してきたらしい。
車椅子でパティシエになった人を教えたこともなく
生活面や介護の世話。
それをサポートするだけの設備が出来ていないからって
正式に断ってきたらしい」