岐阜のケーキ屋と車椅子少年。

な、何よ……それ!?
受賞したらパティシエとして留学させてくれるって
条件のコンテストじゃないの?
なのに……車椅子だからって断るなんておかしい。

「そんなの変だよ!?だって翔馬君。
凄く、凄く頑張って来たんですよ?なのに
車椅子だからってダメだなんて……そんなの変ですよ!!」

私は、悲しかった。
せっかく今まで頑張ってやってきたのに
ここで車椅子が理由で断るなんて……。
胸が締め付けられる思いで……とにかく悔しかった。

チラッと翔馬君を見るとショックのあまり
言葉を失っていた。
相当ショックだったに違いない。だって……。
まるで翔馬君を否定されたようなものだから

「ま、マジかよ……そっか……車椅子だから」

翔馬君は、震わせるように声を出す。
顔は、笑おうとしているが引きつっていた。
無理して平常になろうとしているのがすぐに分かった。
翔馬君……。

「何とかなりませんか!?
もう一度運営とかけあってみるとか。
それか、そのフランスの有名店に連絡して交渉するとか……」

そうじゃないと翔馬君が可哀想だよ!
しかし叔父さんは、悲しそうな顔で首を横に振った。
無理だと言うことだろう。そんな……。
私は、さらにショックを受けた。

「もういいよ……菜乃。そこがダメって言うのだから
それが答えなんだ。言っても無駄だ」

「で、でも……」

「悪い。今日疲れたから……もう帰るわ。
母さん、父さん。帰ろう……」

翔馬君は、泣き言も言わなかった。
その代わり帰ると言い出した。きっと涙も
悔しさを人に見せたくないのだろう。
私は、動揺するも止めることは出来なかった。
苦しい時に1人になりたいこともあったから……。

翔馬君が帰ると一同静まり変える。
せっかくのお祝いパーティーだったが
何だか苦い思いでのまま幕を閉じてしまった。

自宅に帰ってメールをしてみたがやはり返事は来なかった。
分かっている……きっと声を押し殺して泣いている。
そう私には、思えた。自分がそうだったから
私は、どうしたらいいのだろうか?
何をしてあげられるのだろうか?

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