岐阜のケーキ屋と車椅子少年。

翌日。私は、気持ちが晴れないまま学校に向かった。
ハァッ……とため息を吐く。
フランスに行かなくて一緒に過ごせるけど
何だか納得がいかない。

翔馬君は、ちゃんと受賞した。実力もあったのに……。
もっと他にいい方法はないのだろうか?
バスから降りると上履きに履き替えてクラスに
入っていく。綾ちゃん達に挨拶をすると
しばらくして村瀬君がクラスに入ってきた。

「よう。お前も落ち込んでいるな」

「村瀬君……おはよう。まぁね。
翔馬君。落ち込んでいたね……大丈夫かな?
連絡もくれなかったし」

起きてからスマホを見てもメールは、来ていなかった。
そのまま寝てしまったのだろう。
しかし今も来ていないってことは、誰かと
話すのが辛いのかもしれない。だとしたら心配だ。

「アイツが、あんなに落ち込むのは、事故以来か。
確かに心配ではあるが……でもさ。
乗り越えないといけねぇーんだよ。こういうのは」

「……うん。」

村瀬君は、カバンを机に置きながらそう言ってきた。
乗り越えないといけないのか……。
翔馬君にとったら車椅子に関しては、これからも
こういうことは、あるのかな?
理不尽だと思う。私は、どうしたらいいのだろう。

「村瀬君は、こういう時どうするの?
励ましたりするの?」

「俺か?別に……アイツが何か言ってきたら
そのように接するだけだ。
変な同情とかされたくない場合もあるからな。
俺も口下手だから上手く言葉にできねぇーし。でも
そういう時こそ彼女としてそばに居てやればいいんじゃねぇ?」

彼女としてか……。
確かに彼女ならこういう時は、そばに居てあげるだろう。
ううん。私がそばに居たい。
大好きだから、そばで励ましたい。

するとスマホのアラームが作動した。
誰からだろうかと見ると涼太君からだった。
どうしたのかしら?と思い見てみると

『おはよう。今日翔馬は、体調不良で休みだってさ。
菜乃ちゃん知ってた?』

えっ……?
翔馬君が体調不良で休み?
ショックで体調を崩してしまったのだろうか。
有りえる……翔馬君繊細だから。

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