岐阜のケーキ屋と車椅子少年。
「あらあら。歩斗君と菜乃ちゃんじゃない!!
もしかして翔馬のお見舞いに来てくれたのかしら?」
「は、はい。翔馬君が体調崩したと聞いて
そのお見舞いに……あ、これお見舞い品です」
驚く翔馬君のお母さんに私は、行く時に買った
どら焼きを渡した。
意外な組み合わせに驚いたかもしれないが
ご迷惑じゃなかっただろうか?
「まぁ……わざわざありがとう。それがね。
布団から出て来なくて。
あんなに落ち込んだのは、事故以来だったから
私も心配しているのよ。あの子の夢だったから否定されて
落ち込む気持ちも分かるのだけど……」
布団から出てこない!?
お母さんの言葉に私は、驚いた。
前向きな翔馬君がこんなに落ち込むなんて
胸がギュッと締め付けられる思いだった。
「おばちゃん。ちょっとお邪魔するぜ」
「えっ?村瀬君!?」
村瀬君は、何を思ったが部屋に上がり込んでしまった。
私は、慌てて止めるが気にすることなく
どんどんと中に入ってしまう。
私もお邪魔しますと言いながら慌てて追いかけた。
村瀬君は、黙ったまま階段を上がり1室のドアを
思いっきり開けた。ちょっ……村瀬君!?
「おい、開けるぞ。翔馬。
いつまで塞ぎ込んでいるんだよ!?」
えっ?翔馬君!?
部屋を見ると青と黒に統一した落ち着いた感じで
翔馬君は、ベッドにある布団に潜り込んでいた。
返事もない。私は、不安になっていると
村瀬君は、ズカズカとベッドまで行き布団を
無理やり剥がした。
「おい、聞いてんのか!?翔馬。
いつまでも、いじけてないで出てこいよ!」
「うるせーな。学校も違うしお前には、関係ないだろ!!
俺のことは、放っておけよ」
「はぁっ?それ本気で言ってんのか!?」
翔馬君のパジャマの裾を掴む村瀬君。
一触即発な状態になりかける。
翔馬君は、ギロッと村瀬君を睨み付けた。
その目は、涙の痕があった。翔馬君……。
しかしすぐに目線を逸らしてきた。