岐阜のケーキ屋と車椅子少年。
一体どんな辛いことだったのだろうか?
交通事故のことを想像しただけでも恐怖だった。
翔馬君は、そんな辛い過去から
どうやって乗り越えたのだろうか?
「聞いた話だから詳しくは、本人に聞くといいわ。
事情を他人に話すものではないし」
「う、うん。」
凄く事情を聞きたかったが確かに
それを他人が話すものではない……。
今度行った時に聞くことが出来るだろうか?
しかし今度と行ってもすぐに行くには気が引けた。
次の日は、祖母の自宅の草むしりをしたり
花の水やりをして過ごした。そして2日目。
やっぱりあのお店が気になって仕方がない。
また来てもいいと言われたが、もしかしたら
社交辞令かも知れない。
でも、またあのチョコケーキが食べたい。
迷惑かもだけど翔馬君に会って事情を聞きたい。
「あ、あのね……お祖母ちゃん。
何かお使いとかない?」
私は、祖母にお使いがないか尋ねた。
お使いのついでなら立ち寄る理由になるかも
祖母は、私の考えていることが何かピンっと来たのか
クスッと笑っていた。
「そうね……なら、菜乃ちゃんに
お使いを頼もうかねぇ……」
そう言って祖母が頼んだのは、ショコラのお店の
抹茶ケーキだった。
聞いて自分も食べたくなったらしい。
私の気持ちに気づいて配慮してくれたようだ。
やった……お店に行く理由が出来た。
私は、嬉しくて喜んだ。
そして祖母からお金を貰うと暑い中私は、
ショコラのケーキ屋に向かった。
柳ケ瀬の商店街の横を通り過ぎて大通りに。
岐阜駅の方を向かい歩いて行くと
ショコラのお店が見えてきた。
窓越しから覗くと美紀子さんがレジをやっているのが
見えた。あ、居た、居た。
翔馬君は、何処に居るのかしら?
ここからだと見えない……。
お使いを頼まれているのだから
中に入ればいいのだが何だか恥ずかしい。
お店の周りをウロウロとしているとカランッと
入り口のドアが開いた。
私は、ビクッと肩を震わせた。
出てきたのは、お客さんだった。
あ、なんだ……お客さんか。
ホッとしたような少し残念な気持ちになった。