岐阜のケーキ屋と車椅子少年。
「あ、私は、東京から来たの。
お祖母ちゃんがここの近くに住んでいて
夏休みだから……その……私だけ遊びに来たの」
嘘ではないけどイジメが遭って逃げてきたとは
言えなかった。恥ずかしい……。
しかし翔馬君は、それを聞いて表情がパアッと
明るくなった。
「マジ?えっ……菜乃。東京人なの?
カッコいいなぁ……じゃあさ東京ツカイツリーとか
もう行ったのか?芸能人とか普通に歩いてんの?
スクランブル交差点って凄いの?」
興味津々と私に質問をしてくる。どうやら
翔馬君は、東京に憧れを抱いているようだった。
東京は、都会だしたくさん建物やいろんな物があり
便利でいいところだと思う。
ただ……イジメに遭ってきた私には、重い場所だった。
「ツカイツリーは、小さい時に行ったよ!
芸能人も会えるらしいけど……私は、
会ったことないかな」
芸能人に会えるのは、奇跡的に
運がいい人ぐらいだろう。人も多いし……。
でも会える確率は他よりもあると思う。
ロケ地にもなるし……。
「なんだ……そうか。東京でも会えるの限られるのか。
こっちだと何かイベントがないとなかなか芸能人とかに
会えたらいいのにな」
ちょっとガッカリする翔馬君に
何だか申し訳ない気持ちになった。
もっといろんな情報を持ってたら良かったのに
大した情報がない。
「翔馬君は?今は、この辺?」
申し訳ないから話を変えようとした。
翔馬君は、この辺の人かしら?
岐阜は、広いから遠くから来る人も居たりする。
「俺?俺ん家は、各務原。岐阜市の隣」
「かかみはら?」
「違う、違う。“かかみがはら”
言いにくいけど……各務原市も色々あるぜ。
イオンに航空宇宙博物館とか
アクアトドとか……あ、学びの森とかさ」
あ、イオンとか柳ケ瀬に出会ったお爺さんも
似たようなことを言っていたわ。
余計に気になる。翔馬君の住んでいる街が。
「そうなんだ……どんなところ?」