岐阜のケーキ屋と車椅子少年。
思わず見惚れてしまった。
イチゴを切るのを再開させると生クリームを塗った
叔父さんが私のところに来てスポンジを近くに置いた。
「菜乃ちゃん。切ったイチゴをこのスポンジに
隙間なく並べてね」
「は、はい。分かりました」
もたもたしていたから次の仕事が来てしまった。
私は、急いでイチゴを半分に切るとスポンジに並べた。
並べ終わったスポンジは、また翔馬君の叔父さんが
受け取り生クリームで綺麗に塗って行った。
それからもイチゴを切っては、並べるその繰り返し。
他にもカップケーキの飾りつけや
クッキーの型を取ったりやることは、たくさんあった。
知らなかった……こんなに重労働だったなんて。
美紀子さんは、店のレジや接客を担当していた。
午前中は、厨房のお手伝いで終わってしまった。
お昼になると休憩に入る。
祖母の作ってくれたお弁当を食べていた。
すると翔馬君の叔父さんが
「いや~ケーキ作りの手伝いばかりさせてごめんね?
お陰で助かったよ」と私に謝ってきた。
「いえ……ケーキ作りの体験が出来たし
楽しかったです」
慣れないから足手まといになっていたけど
なかなか出来ない経験をさせてもらえた。
どれも新鮮で楽しい。
「そうか……それなら良かった。
午後は、翔馬とホールをやってね。
こっちは、落ち着いたから」
「は、はい。」
どうやら作る方は、落ち着いたらしい。
ケーキ作りは、大変だったけど楽しかった。
接客の方は、大丈夫かなぁ……?
少し不安になっていると翔馬君は、
ひょいっと私のカラアゲを取ってしまった。
「あ、私のカラアゲ……」
「よそ見しているからいただき。
うん?このカラアゲすげぇうめぇ……」
翔馬君は、食べると祖母が作ったカラアゲを
大絶賛する。それもそうだろう。
祖母の作るカラアゲは、母も大好物で
母もそのレシピで私に作ってくれていた。