岐阜のケーキ屋と車椅子少年。
「こら、涼太。あまり翔馬君をからかってやるな。
彼女だって困っているだろう。
ごめんね……菜乃ちゃんだけ?」
「あ、いえ……」
涼太君のお兄さんに謝られ私は、慌てて言った。
ちょっと動揺してしまったが謝れることではない。
するとお兄さんは、ニコッと微笑んできた。
「俺は、この子の兄の圭一です。
さっきまで車で2人を送迎していたのだけど
中に入りたいって行ってきてね」
「そうだったのですか……」
やっぱり物腰が柔らかくて話しやすそうな人だった。
話し方も優しい。しかもイケメンだし……。
照れているとそれを見ていた翔馬君は、
ムスッとしていた。すると美紀子さんがクスクスと
笑いながらコーヒーを持ってきた。
「あらあら~翔馬君。ライバルが出現かしら?
しかも相手は、イケメンの圭一君だし」
「何でライバルなんだよ!?」
「素直になりなさい。
はい。圭一君、コーヒーね」
そう言いながらコーヒーを涼太君のお兄さんに渡した。
するとさらにムスッと頬を染めながら
不機嫌になっていく翔馬君を見て美紀子さんや
涼太君は、アハハッと笑っていた。
私は、意味が分からずにきょとんと首を傾げていた。
涼太君のお兄さんもクスクスと笑いながら
コーヒーを口につけていた。
「あ、そういえば3人は、もう夏休みの宿題は、
やったのか?」
お兄さんの発言に私だけではなく
翔馬君と涼太君が一瞬固まってしまった。
夏休みの宿題……。
「兄貴……忘れていたことを言うなよ」
「あ~俺も……嫌なことを思い出した!!」