アンティーク
「好きなのは、理屈じゃないよ。ただ、僕は君の鳴らす音に一瞬で心を惹かれた。それだけじゃ、だめかな?」
「いいえ、そんなこと」
「じゃあさ、どうして玲奈は彼が好きなの?」
本当はこんなことを聞きたくないけれど、なぜか今はそれが知りたい。
「どうして……それは、こんな私に笑顔をくれたから……です」
「笑顔?」
それは、僕が考えてはいない答えだった。
「接していく中で、彼はいつも笑っていて、優しくて、それが心地よかった」
窓から光が入って来て、彼女の顔を照らす。
自然とこぼれる小さな彼女の笑みが、その光によって一層美しく見えて、僕はそれに目を奪われる。
だけど、奇麗だと思う程嫉妬が沸きあがって来て、俺はそれに苦しめられる。
彼女が、彼の外見ではなく内面に惚れていると分かると、僕なんかにはもう勝ち目なんてないことが分かってしまう。
でもそれでも、聞いてしまう。
「僕は、玲奈にとってそんな存在になれませんか?」
「それは…………」
自分でも、彼女にそんな質問を投げかけるなんてずるいと思う。
だけど、もしかしたら彼女が「なれますよ」と言ってくれるんじゃないかということを期待してしまうんだ。
「ごめん、こんな質問忘れて」
俺は、彼女の答えが聞くのが怖くて、自分からシャッターを下ろした。