アンティーク

大学に着くと、本当にたまたま、岡田翼に会う。

彼は俺を見ると頭を下げてそのまま通り過ぎようとした。

「あ、あのさ」

思わず彼の足を止めた。

今1番彼女の近くにいるのはきっと彼で、もしかしたらあのことも知っているかもしれないと。

「玲奈さんのことなんだけど」

「どうしたんですか?」

「彼女、何か変わった様子とかなかったかな?」

「うーんどうでしょう」

首を傾げて考えている。

「本人に聞いた方がいいかと」

彼は知っているのか知らないのか、そんなことを言う。

「そうだよね」

彼は会釈をすると、急ぐように行ってしまった。

何か用事があったのをわざわざ止めてしまったのか。

色々と情けない自分にため息が出てくる。

「レオ、なにしてんの?」

「将生」

何も知らない将生は、もちろん普段通りだ。

この際、将生が玲奈さんをどう思っているのか、はっきりさせたい。

「将生はさ、玲奈さんのことどう思ってる? 本当のこと教えてほしい」

「いきなりなんだよ……好きだけど、俺より相応しい人がいるから付き合うとかは考えてない」

「相応しい人?」

岡田翼のことだろうか?

それとも他の誰かだろうか? 

「ああ」

それだけを言うと将生は「授業遅れるぞ」と言って先に校舎の中へ入って行く。
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