アンティーク
「とにかく、後悔しないように」
将生は一度立ち止まって俺の方を向いて言った。
当たり前だ、後悔なんて、したくない。
でも、もし告白してダメだったらもう今のような関係にも戻れないかもしれない。
そう考えると、せっかく湧き上がってきた勇気もまた流れてしまいそうになる。
「なに考えたんだか。あんまり考えすぎても意味ないと思うぞ。恋は理屈じゃないだろ」
それを言うと「まじで遅刻するぞ」と、再び歩き始めた。
「いらっしゃいませ。あ……」
玲奈さんだ。
「レオくん、今日時間ありますか?」
彼女はアンティーク品を見ないで真っ直ぐ俺のところに来た。
「うん…………。メッセージくれればよかったのに」
「ううん、直接言いたかったんです」
彼女は真っ直ぐ前俺の目を見ている。
その目からは、何かの決意のようなものを感じる。
「うん、そっか……。あと1時間くらいなんだけど」
「じゃあ、待ってます」
彼女は一礼をして、店の奥へと行った。
いつものように、彼女は嬉しそうな目でその品々を見つめている。
その姿を見ると、心が晴れてくる。
ああ、やっぱり好きだ。
俺は、玲奈さんが好きだ。
結局、何度もこの答えに辿り着く。