アンティーク
「ごめん、長時間待たせて」
「いえ」
「とりあえず、歩こうか」
「そうですね」
何を言えばいいだろうか。
元気?
泣いてたようだけど、大丈夫?
寒いね。
いや、どれもまどろっこしい。
ここまで来たら、もう言ってしまった方がいい。
俺の中に生まれて、大きくなっていくこの想いを。
「玲奈さん話って……」
「えっと……」
彼女は立ち止まり、俺の方を見る。
「もし良ければ、俺から話もいいかな?」
「はい……どうぞ」
あとはもう、2文字さえ伝えられればいいんだ。
「あの…………俺、前から玲奈さんが…………好きなんだ」
言う1秒前までは心臓が止まるんじゃないかと思うくらい早く動いて、だけど言ってしまった今、意外にもすっきりする。
でもその次の瞬間、不安に襲われる。
もしこれで、こうして2人で歩く時間を失ってしまったらどうしようかと。
俺は、様々な思いを胸に玲奈さんの口が開くのを待った。
「私、ですか?」
「うん、もちろん。玲奈さんだよ」
彼女は、その目を大きく開いたかと思うと、だんだんと笑みが現れる。
「私も、…………好きです。レオくんのことが。コンクールの後、その高揚感で翼くんが好きかもって思って、でもやっぱりレオくんの顔見ると私の全てがレオくんを好きだと言って。だけど、この前レオくんが素っ気なくて私、嫌われたかと思って」
「ごめん、俺が勝手に嫉妬しただけなんだ。音楽やったない俺が玲奈さんの隣にいても意味ないって思って」