アンティーク
涙を浮かべて、将生の目を真っ直ぐ見て話す彼女に、反論する気が起きなかった。

その言葉には、嘘という色がどこにも見られなかったから。

将生は思う、きっと彼女は周りの目を見るのが怖かっんだ、その目から逃れたくて、だけどそれは無理で、それでもなんとかもがいていたのだと。

将生が初めてレオと会った時も、レオの将生を見る目はまるで木漏れ日のような、すっと全てを包み込んでくれるような目をしていた。

レオは、誰にでも優しい。

だからこそ、その感受性の豊かな心は、人一倍傷付きやすい。

「ごめん、疑って」

「いえ、こちらこそ。あんな会話を聞いたらきっとレオさんだって嫌に決まってるのに……」

きっと、彼女も優しくて純粋で、だからこそ傷つきやすい。

友人に話を合わせていたのだろうと、その彼女の遠慮がちな表情から読み取ることが出来る。

将生は、どうしてだか、そんな彼女のことをもう少しだけ知りたいと思った。

「連絡先、交換しない?」

「え、いいんですか?」

普段は絶対こんなことはしないけれど、ましてや女性という生き物に対して連絡先など聞く意味がないとついさっきまで思っていたのに、なぜかそんなことをしてしまっている将生がいた。

「アンティークショップ、行くときは誘って。たまにでいいから」

「はいっ」

嬉しそうに笑う彼女の表情に、将生は見惚れてしまう。

子供のような彼女は、なんだか太陽のようだ。

彼女は、レオが好きなんだろうか。

その問いが将生の頭の中に浮かんだが、今は控えておくことにした。

「じゃあ、俺行くわ」

「また、会いましょうね」

将生と別れる寸前の彼女は、とてもいい表情をしていた。
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