アンティーク
「今日もバイト?」

将生は俺に会うと、だいたいこの質問をしてくる。

もう、何十回もこの言葉を聞いているが、なぜか不思議と飽きることがない。

「うん、このあと。この課題を少しやったら行く予定だよ」

「一緒に行ってもいいか?」

「ああ」

将生はこうして時々、アンティークショップに一緒に行く。
なんなら、もういっそのこと一緒に働けばいいんじゃないかとも思ってしまうが、俺はそれを口にはしない。

そして、来た時にはいつも必ず最後にコーヒーカップを見て帰る。
こだわりの強い将生のことだ、きっと自分が納得できる最大級のものを見付けているに違いない。

そう思いながら、俺は課題をやり始める。







いつもよりも過ごしやすい天気のせいで、はっと気付くと2時間も経っていた。
将生の方を覗くと、彼も真剣な顔をして手だけを動かしている。

心地よいそよ風の吹く木の下での課題は、ついつい時間を忘れてしまっていた。

「そろそろ、時間だ」

そう言うと、将生は背伸びをして大きく息を吸う。
すると、どこからかぽきぽきと音が聞こえてきて、今までずっと同じ体勢で作業をしていたことが分かる。

「少し急ぐぞ」

俺はそう言って将生を急かし、二人で大学を後にした。

< 3 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop