アンティーク
将生は、近くにあるアンティーク品を見つめている。
「仕方ないよ。人の気持ちは……どうにもならないんだ」
なんとなく、玲奈さんが将生に惹かれているのは見ていて分かる。
俺から見た2人は、なんとなく似ている。
何が似ているとか具体的には言えないけれど、2人の持つ雰囲気はどことなく近くて、それはお互いを引き付けるには十分だ。
「将生はさ、どう思ってるの?」
「俺は……」
「遠慮なんてしなくていい。将生が玲奈さんに対してだけ態度が違うことくらい、隣にいればすぐに分かる。今までの女の人とは違うって感じてるんだろ?」
「それは、そうだけど」
「俺のことは気にしないで。もし、好きと言う気持ちが少しでもあるなら、それを彼女に示さないと。誰かに、取られちゃうよ」
心の奥底では、もう1人の自分が叫んでいる。
嫌だ、好きな人を誰にも取られたくない、俺の気持ちが分かるなら諦めてくれ、と。
でも、そんなことをしても、誰1人幸せを感じることができないことも、分かっている。
だから、俺は手放したくないと思っている自分を押し込めて、将生の背中を押す。
「俺の為って言うなら、なおさら自分の気持ちに正直になって。好きな人の笑顔を見ることがどれだけ嬉しい事か、分かるだろ?」
自分を押し殺して、友達の恋を応援することが、こんなに辛いことだなんて俺は知らなかった。