アンティーク
「多分だけど、玲奈さんは俺たちといることで誰かに嫌がらせされたんだと思う」
「え…………」
自分のことしか見えていなかった俺は、玲奈さんのことなんて見えてなかった。
「それで、あの日、玲奈さんが色々と話してくれて」
「そうだったんだ……」
「レオも玲奈さんも、孤独と戦ってんだ。きっと」
急に玲奈さんに会いたくなった。
そして、思いっきり抱きしめてやりたくなった。
初めて会った時のあの小さな声が思い出される。
俺や将生と会う中でどんどんとその顔に笑みが増えていった玲奈さんもまた、頭の中に浮かんでくる。
初めこそは多分、俺たちに警戒していた玲奈さんは、徐々に心を開いてくれていたんだ。
「俺、そんなこととは知らずに思い込みであんなこと将生に言って。本当にごめん」
そしてまた、玲奈さんにも心の中で「ごめんなさい」と言う。
「いいよ。その代わり、これ貰うぞ」
そう言って、食後に食べようと思っていたショートケーキに乗っている苺を将生は一瞬でさらってしまった。
「ああ、それはダメだろ」
「これで全部流してやるから」
「食べ物の恨みは怖いんだからな……」
その言葉に将生はくすくすと笑い始めて、ついにははははっと声を出す。
「笑いすぎだから」
それは久しぶりに見た将生の笑った顔で、心が軽くなって行く。
「ごめんごめん」
そう、この日常こそが、俺にとってはかけがえのない宝物なんだ。