アンティーク
「え、いや……おい」
俺は、手に力を入れると、その掴んだ手から将生に全てを伝えようと力を入れる。
将生はそれに気付いたのか、俺の顔を一度見てから玲奈さんにバレないように小さくため息をついた。
「ああ、そうだな。急にお腹空いて来た」
それはまるでロボットのように棒読みで、少しは縁起の勉強くらいしたらどうだとつい突っ込みそうになる。
「じゃあ、三人で行きましょう」
その顔は、心なしか二人っきりの時よりも明るくなったように見えて、そのことが分かると反対に俺の心は暗くなっていく。
やっぱり、どう見たって玲奈さんは将生に惹かれている。
将生がどうかなんて関係ない。
さっきまでの高揚感は面白いくらいに消え去ってしまう。
そんな俺の表情の変化を見たのか、将生はまさかの質問を玲奈さんにし始めた。
「玲奈さんって、好きな人とかいるの?」
「えっ、好きな人、ですか?」
玲奈さんは、その質問をされてから地面を見て歩く。
「えっと、それは……正直、分からないんです」
「分からない?」
「はい。なんせ私、今まで恋愛とかしてこなかったので」
と、玲奈さんの口から出てきた言葉は俺にとっては喜ばしいものだった。
だからと言って、あからさまに態度に出せるわけもなく、はやる気持ちを抑えて玲奈さんの話を聞く。