アンティーク
「お待たせ」
結局、最後に席に戻ったのは俺で、先に2人は椅子に座って待っていてくれた。
「それじゃあ、いただきましょう」
「うん」
口の中に入れる前に、出来立てのバゲットの匂いが漂ってきて匂いだけでも美味しいことが分かる。
バゲットを口の中に入れる。
実際に噛んでみると、パリッと音がして割れて、パンのうまみと中に入っているトマトやハムのうまみがマッチしていて、それは俺がフランスで食べたものくらい美味しかった。
「で、さっきの話の続きだけど、レオくらいじゃないか。恋がどんなものか分かるの」
「え、俺?」
「そうなんですか?……恋、してるんですね」
将生だけでなく玲奈さんまでそんなことを言っている。
「レオくん、ぜひ聞かせてください。恋について」
片思いの人物に、恋の話をするなんて想定外すぎて俺はどうしようかと内心焦っている。
もはや、この空間から一時的に逃げ出したいほどだ。
「それは……」
興味津々な玲奈さんの目が、余計に話しづらくさせる。
玲奈さんだよ、なんて軽く言えたらどれだけ楽なのか。
でも、そんなことできるわけでもなく、俺は何を話そうか頭を急速に回転させた。
「えっと…………その人ともっと話をしたいとか、その人がいると笑顔になれるとか、男の俺だったら、その人のことを守りたいとか。その人と、幸せを共に作っていきたいと思う。その人との未来を、願ってしまう……かな」