アンティーク
「はー、美味しかった」
外に出るとだいぶ寒くなっていて、吐く息が白くなる。
本格的な冬がやってきた。
「玲奈さんはこのあとは?」
「私は帰ります。2人は?」
「俺たちは基本大学で何か作ってるよ」
「まあ、そこが1番広いし」
「そうなんですね」
わざわざ来てもらったのかと思うと急に申し訳なくなってくる。
「美味しいパンも食べられたし、今日は制作捗りそう」
「俺も」
でも、2人はいつも私の考えるマイナスなことを消してくれる。
まるで、私の心の中を読んでいるかのように。
「また、いつでも誘って」
「はいっ」
「俺、まだ開いてる薬局行って薬もらってくるわ」
「そ、じゃあ大学で待ってる」
「おう、じゃあ、玲奈さんおやすみ」
「はい、おやすみなさい」
将生さんがいなくなると、レオくんと2人になる。
どうしよう、何を話したらいいのかが急に分からなくなって、話題が全く出てこない。
「玲奈さん、どっち?」
「駅の方です」
「じゃあ、送ってくよ」
「……良いんですか?」
「もちろん、もう遅いし1人じゃ危ないでしょ?」
レオくんは、私の横に立つと駅の方を向いて歩き始める。
大学とは真逆なのに、レオくんの作品の制作時間を縮めてしまうのに、レオくんは嫌な顔一つしない。