アンティーク

「俺の、せいだよね?」

「いえ、そんな」

違うと言いたくて、握った手に力を入れてしまう。

「あっ」

そして、すぐにその手を離す。

「ごめんなさい、手、握ってしまっていて」

「いや、全然…………嫌じゃなかったから」

レオさんの手の感覚が、まだはっきりと残っていて、少し冷たいその手をもっと温めたい。

「それより、俺、怖かったよね?」

「その、むしろ、嬉しかったです」

あんな風に、私を守ってくれるための言葉を、そのレオさんの姿を、怖いだなんて思うはずない。

「そっ……か」

私は、レオさんの顔を見る余裕もなくて、その言葉だけを聞いていた。










「じゃあ、私電車に乗るので」

「うん、気を付けて」

改札の前で別れて、そこを通る。

改札を通った後にレオさんの方を向くと、まだ彼は私のことを見てくれていて、さらに手まで振ってくれている。

それに振り返して会釈をしてから、私はホームにつながる階段を降りていった。
< 87 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop