アンティーク
「俺の、せいだよね?」
「いえ、そんな」
違うと言いたくて、握った手に力を入れてしまう。
「あっ」
そして、すぐにその手を離す。
「ごめんなさい、手、握ってしまっていて」
「いや、全然…………嫌じゃなかったから」
レオさんの手の感覚が、まだはっきりと残っていて、少し冷たいその手をもっと温めたい。
「それより、俺、怖かったよね?」
「その、むしろ、嬉しかったです」
あんな風に、私を守ってくれるための言葉を、そのレオさんの姿を、怖いだなんて思うはずない。
「そっ……か」
私は、レオさんの顔を見る余裕もなくて、その言葉だけを聞いていた。
「じゃあ、私電車に乗るので」
「うん、気を付けて」
改札の前で別れて、そこを通る。
改札を通った後にレオさんの方を向くと、まだ彼は私のことを見てくれていて、さらに手まで振ってくれている。
それに振り返して会釈をしてから、私はホームにつながる階段を降りていった。