アンティーク
岡田さんが冗談に言っている感じもしなくて、ただただ私はその顔を見つめてしまう。
彼はただ私見て口角を上げている。
笑っているんじゃなくて、ただその口の端を上げているだけの顔は、まるでピエロみたいだった。
「まあ、僕はあなたのことを考えているんです。せっかく魅力的な音を持っているのだから、それをわざわざ壊さなくても良いでしょう」
「あの…………」
「答えはすぐに出さなくてもいいですよ。ゆっくり考えてください」
それだけを言って、岡田さんは練習室から出ていく。
1人そこに取り残された私は、呆然としてしまい暫くそこに立ちすくんでいた。