クリスマスの想い出
そんな中、桃花がツリーを瞳に映したまま言った。

「天くん…私たち、別れない?」
「……え?」
「中学に入って全然会えないし、もう、辛くて…ごめんね?」

は?
いや、どういうこと?

「いや、そんなのいくらでもこれから会えるように…」
「とにかくもう、やめたいの!…さようなら。」
「あっ、桃花?!」

桃花は俺に背を向け、走っていった。

「……意味わかんねー…」

周りは誰かと笑顔で歩いたり、ツリーの前で立ち止まったりしているのに。
俺だけ独りぼっちだ。

桃花はもう、ずっと、俺との関係を辞めたかったのかもしれない。
そして、俺はその想いに気づけなかった。

でも、何故だろう。

今は桃花に振られたのに、頭の中には桃花の顔ではなく、あいつの顔が浮かんでいる。
いつも、くだらないことしか話さない、友達未満の女子。

俺は桃花が好きだったし、そこそこショックは受けている。

それでも、今、桃花を追いかける気持ちにはなれない。

俺は1人、ツリーを見続けた。

そして、雪はふわふわと、柔らかに、地面に落ち始めた。
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