クリスマスの想い出
どれぐらい見ていたのだろう。

少なくとも、後ろから声をかけられるまでは見ていた。

「川崎。」

俺が振り向くと、信条が両手に飲み物を持って立っていた。

今1番会いたくて、会いたくなかった人。
会ってしまったらきっと、何かが動き出してしまうから。

俺は信条から目を背けた。

「こんなところで1人、何してるの?」
「いや…まあ、ちょっと…な。お前こそ何してんの?」
「私は今からケーキ取りに行くの。……とりあえず、そこのベンチ座らない?」

信条に言われるままに、ツリーの近くのベンチに腰掛ける。

「お使いはいいのかよ?」
「まあね。ちょっとぐらいならいいでしょ笑」
「……俺さ、今、そこで彼女と別れたんだよね。」
「…うん、」
「ほんとは、心のどこかで、あいつが不満に思ってることも気づいてたけど、何もしなかった…」
「…うん、」

俺は自分でも気づいていなかったような想いだけど、信条が頷く声を聞くと、自然と言葉が溢れてきた。

「別れても、悲しくないって、思い込もうとしてるんだけど。」
「うん、」
「……やっぱり、悲しくて。」
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