Little Gang
人気のない階段まで来たとこで、ようやく手を離した。
RRRRRR。
「悪いッ、俺だ・・・ちょっと出るわ」
『どーぞどーぞ』
「んだよサキ。 ああ? コイツはダチだ。 浮気とか信用ねーんだな」
へえ、彼女いたんだ?
気に入らないことががあると壁や家具を破壊する(腕っぷしは強いけど人に手を出すことは基本的にない)、あの乱暴でぶっきらぼうな一匹狼がねぇ?
こっそり聞き耳を立てる。
絶対音感とはまた違うけど・・・昔から私は耳がよくて、人よりも多くの雑音を拾ってしまう。
・・・不可抗力だ、うん。
どうやらさっきの現場を目撃してたみたい。
あらら・・・ご愁傷さま・・・ヤキモチ焼きな彼女を持つと大変だね?
心の中でシンさんに言った。
「お前以外の女と話すなだぁ?」
シンさんの低い声が廊下に響く・・・。
「ウゼエ、つかキモイ、俺が誰と何をしようがお前には関係ねえだろ」
まるで地の底から響くような低い声。
「なあ、別れてくれ。 もうお前の小芝居には付き合ってやれない」
そういやシンさんが言ってた。
“分かんだよ、その怯えた目を見れば・・・バカでも違和感に気づく。
俺も似たような境遇で育ったからな”
頭の中に浮かんでるのは、困ったようなシンさんの笑み。
じわりと込み上がってくるのは涙と、なんだかわからない感情。
彼女さんに性的虐待を受けてたなんて・・・。
「別れてあげてもいいわよ。 でもそしたら手首切って私死ぬから」
彼女さんの言葉でシンさんの顔が変わった。
「彼氏から暴力受けてる美少女の悲劇は名作だと思わない? 私はとても可哀想だけど・・・だからこそ、みんなが一緒に心を痛めてくれる」
「ーーーーは?」
「人生は悲哀に満ちているほど美しい」
「・・・何だと?」
「あなたは私の美貌を引き立てる脇役よ。 優しいあなたはちょっと自殺をほのめかせば何でもわがままを聞いてくれる。 永遠に私だけの下僕なんだから♡」
「おいっ、待て!」
ブチッ