Little Gang
♪〜♪〜
携帯の着信音が鳴り響く。
私は携帯を出し、通話ボタンを押した。
『・・・兄さん?』
「ーーーああ。 そろそろどっち側につくか決まった頃合いだと思ってさ」
責めるわけでもなく、これからの方針を決める為に兄さんは問いかける。
兄さんの声には逆らえないものの・・・。
思っていたよりずっと答えを用意できるだけの力があり、頭が徐々に慣れ始めてきた。
この体勢のおかげもあるかも・・・。
内容も控えめだけど、背中にヒロトさんの体温を感じて、恐怖は少し和らいでる。
私が身体を震わせるたびに、ぎゅっと抱きしめてくれる腕が心地よくて。
『ごめんなさい。 Roseliaから抜けさせて』
「ーーーそうか」
『心の奥底に眠る“特別な人を守って死にたい”って渇望が消えたわけじゃないよ』
「・・・なら何故?」
『何かを得るには何かを捨てなきゃいけない』
「かつて俺が家族を切り捨てたように?」
『うん。 だから私は兄さんを選ばない』
「お前がRoseliaの傍にいれば大きな混乱もなく世界が収まる可能性がある」
『だろうね』
私は、Roseliaのナンバー2にして特攻隊長。
影の暗躍者として要の役目を担っている私がテロ組織から抜ければ、均衡が崩れて大規模な抗争が各地で勃発し何千万人の命が失われる。
一番最初に狙われるのは禁断の果実に手を出して誑かした張本人・・・西郷家のみんなだ。
ケンカでは誰にも負けない自信はある。
これまでにも弱者の望みを叶えるためなら、どんな組も企業も組織も潰してきた。
・・・が。
今回ばかりは被害の規模がデカすぎる。
全部を守るのは不可能だ。
「その可能性を捨ててまでこれから先も西郷兄弟と生きる覚悟はあるのか・・・?」
穏便に済ませたいなら兄さんの手を取るべきだ。
だけど、西郷兄弟を手放せない。
・・・本当はわかってた。
この愛が本物でも、お互いが思い合っていたとしても。
いつかは終わらせなければならない、と。
何故なら、怪物だから。
みんなの事が好きで思ってるからこそ、みんなが大切に思ってる家族のことを、みんなを守らないといけない。
みんなの大切なものを守れる可能性があるのは・・・。
兄妹の確執に決着をつければいい。
『・・・終わらせようか』
「ああ」
『今夜の8時ね』
短い会話を最後に電話を切って、私はヒロトさんの膝から飛び下りた・・・。