Little Gang
『あ・・・ルナさん、もう出たの? 』
「何か作ってるんですか?」
『あーダメダメ。 みんなそれ以上、こっちに来ないで』
近寄ろうとしたら手で制されてしまい、渋々引き下がる。
でもチラッと・・・ふ菓子のようなものが見えた・・・気がしなくもない。
今の何だったんだろう・・・盾(フライパンの蓋)を持って格闘してる。
料理って大変なんですね?
気になってフライパンを見ていると、僕の視線を遮るように家政婦さんが前に立った。
『あっちのソファに座って待ってなさい』
と(黒い)笑顔を向ける家政婦さん。
『絶対にキッチンを覗いちゃダメだよ』
一度決めたらテコでも動かないらしい。
『みんなも、お風呂入ってきたら? 返り血ついてるよ』
「わかったよ」
逆らってはいけないものを感じて、みんな言われた通りに踵を返す。
『あれ? ルナさん・・・香水つけてる?』
「えっ、つけてませんよ!」
『シャンプーの匂いかな。 でもなんだろう・・・きゅんとするね』
『っ・・・!』
タオルドライしただけの濡れた髪から水滴が落ちてくるのもそのままに、急いでソファに移動する。
家政婦さんの「きゅんとする」を真に受けてどうするんですか。
嬉しいとか、毛ほども思ってないですから。
だって僕、そんなにチョロくないし。
ソファに腰かけ、膝の上でクッションを抱きしめる。
たまたま好みの香りで、深い意味なんてないんですよね。
家政婦さんに他意はないと解釈して、気にしないようにしようとした。
・・・なのに、どうしてだろう。
いつまで経っても頬の熱が引かない。
だって・・・家政婦さん、なんか出逢ったことのない変人だし。
素直というか、裏表がないというか・・・。
一生懸命な様子さえある。
家政婦さんが普通じゃないから、不意打ちを食らって動揺しただけ。
それから、いつもと違う状況のせいだ。
でなきゃ、こんな意識したりなんか・・・。