Little Gang
『まだ、手が震えてるんだ。 情けないな』
「染谷でも、緊張とかするんだなー。 恐れ知らずで敵を作る正義がある女、お前くらいだよ」
それは褒め言葉として受け取っておくよ。
『ありがとう』
「うん、やっぱ調子狂うわ」
ソウデスカ・・・。
『シュウさんは、何を守ろうとしてるの?』
「当たり前の日常、だよ」
小さく聞こえた声には、強い意志が宿っているように感じられた。
「食べたいものを食べて、勉強をして、家族や友人と過ごして、1日が終われば安心して眠りにつける・・・そんな、日常」
そして、身に纏う空気は繊細なガラスのように脆く穢れを知らない純白の色をしていた。
「それが壊れるのだけは、許せないんだ。 ・・・だから、現実の行動や努力で逆夢に変えたい」
強い、願い。
それはきっと、シュウさんの嘘偽りない気持ちだった。
「俺はね、全部守りたいんだよ」
軽い雰囲気の人だな、と思っていた。
話していると自然と心が和まされてついシュウさんのペースに巻き込まれてしまう。
けど、その内に秘めるものは想像以上に強い意志なのかもしれない。
・・・尊敬するな。
だって全部を守ろうとしてるんだから。
同じ哀しみを抱く者として、死を身近に感じて命を犠牲にする世界にいたはずなのに、どこかシュウさんを軽く見てしまっていた。
そのことに今さら気づいて、恥ずかしい。
『ごめんね。 絶対不可侵なのにこみ入ったことを聞いちゃって・・・』
「なに謝ってんの」
小さく、シュウさんが笑う。
そうすると、ぴんと張りつめていた空気がふっとゆるむようだ。
・・・私、緊張してたのかな。
今さらのように、感じた。