Little Gang
気づけば放課後。
私は帰る準備をすることもなく、音楽を聴きながら譜面を見つめ続けていた。
我ながら上出来かも。
なのになんだか私は憂い顔をして、開け放たれた窓から入り込んだ風が柔らかく頬を撫でるのを心地よく感じながら、人っ子一人いない静寂の時間を過ごしている。
蜃鬼楼のみんながいたら、笑われるね。
確実に。
“お前らしくないぞ”って。
“あまり俺を失望させるな”って。
元世界トップの総長が、自分の弱さを表に曝け出すような真似を己に許さない私が、遠い過去の記憶に恋焦がれ感傷に浸ってる姿、なんて。
罪悪感を抱えながら初恋の人に想いを馳せていると、ガラッ・・・と音がした。
「ギター弾いて」
『これ誰の?』
私を無視して、
「いいから早くしなよ」
有無を言わせない声のヒロトさん。
『承知しました。 ヒロト先輩の御心のままに』
いつの間にか私の顔には笑みが張り付いてる。
ONとOFFの切り替えは早い方だ。
ヒロト先輩にギターを渡された私は、試しに作詞作曲した曲を弾いてみることにした。
譜面を頭の中でリピートしながら・・・。
世界に吠える不吉な黒猫の姿は、ヒロトさんの黄金の瞳にどう映ってるんだろう。
不快だと言われようが構わない。
だって今の私はとても機嫌がいいから。
それはもう、頼んでもない歌声を高らかに吠えるくらいには・・・。
〜♪〜♪
無事にミスもなく弾き終わり、目を閉じて演奏の余韻に浸るヒロトさんの横顔を、そっと横目で見る。
脱力系の白猫が夕日を浴びて茜色に輝いてる。
綺麗・・・顔だってすごく整ってる。
男らしいのに綺麗・・・。
身に纏う陰りのある空気は人を惹きつけるカリスマ性を感じる。お酒に酔ったような感覚に囚われるほどの色気の塊。
船に揺られているような気分に似てる。