Little Gang

『起きてる?』


私がそう言うと、ヒロトさんがゆっくりと瞼を持ち上げた。

ちゃんと演奏を聴いてくれてたみたいで、私は安堵の溜息を零す。

よかった・・・。

微動打にしないから本気で寝てるかと思った。

それに口元には小さく笑みが・・・おまけに2回も目が合った。


「アンタが、この家に来た理由がわかった」


『ん?』


頭の上に「?」を浮かべる私に、


「逸材だな・・・この声は・・・」


お世辞ではない心からの賞賛に・・・安らいだ気持ちになって、ゆっくりと微笑んだ。

フッ・・・。

ヒロトさんもまた軽く微笑む。

絡んだままの視線・・・。

真っ白なギターを渡すと、互いの間に静かな時が流れる。

沈黙を破ったのはヒロトさんだった。


「自分の好きな曲を作ってるってより、誰かを楽しませようって気持ちが伝わってきた」


なぜか嬉しそうに感想を伝えてくれるヒロトさんに、私は驚きを隠せなかった。

ぐぬ、と苦虫を噛み潰したような顔をする。

素直に認めよう。自覚はある。

囁くように、宥めるように・・・。

孤児院の子どもたちの孤独を埋めるために、最年小ながらリーダーを務め、母親代わりの仕事を始めたばかりの頃、何度も私が歌っていた曲にアレンジを加えた曲だ。

懐かしい子守唄。

孤児院の子どもたちのための歌。

寝るのがお仕事みたいなあの子達には頭の片隅にも記憶にないかもしれない。

でもそれでいいと思った。

それは私だけの大事な思い出だから・・・。
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