Little Gang
「明日の夜時間空けといて」
『へえ? デートに誘ってくれるの?』
あ・・・不良独特の怖いオーラ、キタ。 だまっとこ・・・。
「ギターのサポメン探してたんだよ」
とヒロトさんが怠そうに頭をかきながら、私に説明を始めた。
「ソロ活動はもうお終いにしようと思って」
『そう』
「アンタを俺専属のギターにしてやる」
『はい?』
「頑張って働けよ」
冗談半分、本気半分でおどけて見せる。
だけどヒロトさんの瞳は揺るがないまま真っ直ぐに私を見ている。
『そうねえ。 ネックなのは面が割れてるところなんだよね』
苦笑いを浮かべながら頬に手を当てる私。
ああッ・・・ビーム、キタ。
しかも追求するような目。
『いいえ、なんでもありません。今回は他を当たってもらうってことに・・・いえ、やっぱりそれは悔しいよね。 ハイリスクではあるけどここは腹を括るとしましょうか』
「ああ?」
睨みつけてヤクザ声を出すヒロトさん。
『女は度胸だもん』
負けず嫌いがつい裏目に出てしまう。
「別に、度胸とかどうでもいい・・・それより、ほら、さっさと帰る準備してギターの練習しなよ」
『徹夜覚悟だね』
人差し指を唇に当てた私は、ふわりと風に髪を靡かせて告げた。
私にとって1番重要なのは・・・。
「どうかしたのか?」
周囲に無関心だと思いきや意外に人を見ているヒロトさんに、私は「見ててください。 今までで1番の音を聴かせてあげます」と普段通りの意地悪な笑みを浮かべた。