Little Gang
「カッコイイよ、ユリさん・・・」
燃えるような赤い夕焼けと同じ髪の色は、灼熱の太陽のように燦々と光り輝いている。
それはまるで・・・。
真夜中でも沈まない白夜のような明るく前向きな姿勢に、いつの間にか俺の兄貴であるヒロトよりもユリさんに目を奪われていた。
気の迷いかもしれないけど、憧れや尊敬に似た感情を抱いてしまうほどに。
「アイジが惚れ込んだ女だけある」
「はい・・・」
ステージの音にかき消されないように、俺たちは互いの耳元に口を近づけて話す。
「あんなに活き活きしたユリさんを見るの、本当に初めてで・・・っ」
「親戚の従兄弟みたいな感想だな」
「っ、だって」
俺は感極まって泣きそうになる。
ステージ上のユリさんは贔屓目なしに見ても輝いていた。
これが、ユリさんが見て欲しかったこと。
きっと一番の夢なのだ。
「悪くねえな」
「・・・好きだな、ユリさんの音」
「まるで、“あの人”みたいってか」
そんなやり取りをしていた時だ。
「えっ、染谷さん!?」
聞き覚えのない声に振り返ると、そこには20代前半くらいの男が驚き顔で立っていた。
思わず警戒して目を細める俺に、隣の五十嵐先生が疑いの眼差しを向けて言う。
「誰?」
「ユリさんの知り合い?」
「っ・・・あの、」
焦げ茶髪くんの言葉がギターの音にかき消される。
すると五十嵐先生が出口を指差して言った。
「外、出ようか」
ライブハウスを出た俺たちは、何とも言えない沈黙の中、向き合っていた。
焦げ茶髪くんは困惑を隠せない表情で俺を見つめている。
「俺、古賀キョウって言います。もしかして西郷ユウタさんですか?」
「いえ、人違いです」
「西郷ユウタに何か用か?」
「っ、五十嵐先生!」
「事実だろ。 そんで、古賀は染谷を知ってるみたいだけど彼氏?」
「染谷さんは俺のバディです」
「うん? とにかく彼氏じゃないのか」
「残念ながら・・・。 できたら先輩には黙っててほしいッス」
「どうして?」
すると京さんは苦笑した。
「先輩の家は複雑で、昔はそれが原因でよく厄介事に巻き込まれてて・・・とにかく俺、先輩が心配なんです」
俺は沈黙でそれに応える。
キョウさんはそれで察してくれたようだった。