Little Gang
『ヒロトさんに想いを届けたい人がいるなら諦めないで。 私は、何があっても応援してるから』
「ああ。 同じ失敗は二度と繰り返さない。 俺はアイツらが疼くような音楽を創る。 ただ、それだけ」
ああ、まただ。
拳を握り締めるヒロトさんの姿が眩しくて、寂しいような嬉しいような気持ちが再び私の胸を軽くつつく。
アイジさんのためとか、正義の為とか、色んな理由や言い訳を重ねながら、私は私の不実から目を背けている。
でも本当にそれでいいのかなって、最近は迷う事の方が多くなった。
本当に、古賀さんの言う通りだ。
私は過去史上、今が一番カッコ悪い。
かつて煮え滾る怒りと共に解体に追い込んだRoseliaと同様の道を歩いてる。
大きくため息を吐いた私は、持てる全ての誠実さを込めた瞳でヒロトさんを見た。
『・・・同じ夢を、見たかったな』
「・・・・・・・・」
ヒロトさんは、暫く黙っていた。
ただ静かに、燃える怒りの双眸で睨みつける。
「・・・なんでアンタさ、そんな泣きそうな顔してるわけ」
『え・・・』
「悩み事があるならハッキリ言ったら? 」
『へえ? ヒロト先輩が私の悩みを解決してくれるの?』
「助けてって素直に言えば、期待に応えてやってもいいけど?」
『ヒロトさん・・・』
「言っとくけど、アンタからどう思われてようが俺には関係ない。 ただ気が向いた時にセッションできれば、それでいい」
『うん、私もその方が好きだよ』
「でもまあ、話を聞くぐらいならまあ問題ないだろう。 ライブ代程度に黙って話聞いてやるから悩みを愚痴りなよ」
『ありがとう。 本当に、大丈夫だから』
「なにが大丈夫だ、めんどくさ・・・。 まあでも、そうだな・・・どうしても俺を頼れないって言うなら・・・今回は特別に、あんたを一晩中甘やかしてやろうか。 ヴァイオリンの音楽鑑賞に招待してやるから、楽しみにしてろよ」
頭を撫でる手の温かさに、心が震える。
でも、優しい時間に身を置けるのは今だけだ。
もう、行かなきゃいけない。