Little Gang
「ユリちゃん。 いらっしゃいませ」
『貸し切りなんですね』
ペコリと丁寧に頭を下げる“瀬良さん”と名乗った男の人に、私は意地の悪い笑みを張りつけた。
瀬良さんは少し眉根を下げ、
「アンリさんから話は聞いてるよ」
と言った。
『彼女扱いしてませんでしたか?』
「・・・・。 さっ、入った入った〜」
グイッと手を引かれ、試着室のカーテンをシャッと閉められた。
・・・・沈黙が答えか。
『・・・これを、着ろと・・・?』
服をじっと見た。
女の子らしさ全開のヒラヒラで派手な色合い、綺麗めより可愛系のコーディネート。
完璧私の趣味じゃないんだけど・・・。
目に痛い色の服を見ると、ギャル充よろしく露出多めなミニスカートで、思わず叫びたくなった。
普段はメンズものの服を着てるし、落ち着いた色合いの服が洋服の半数を占めしてる。
あーでもないこーでもないと悩んだ挙句、兄さんの好意を無下にするのは気が引けると思い、仕方なく着ることにした。
せっかく用意してくれたみたいだし、こんな機会はまたとない。
それに、カノンやリサみたいなガーリッシュ系のコーデ、試してみたいなーって思ってたし。
カーテンを勢いよく開けると、瀬良さんは金縛りにあったように言葉を失って私を見てきた。
「ユリちゃん、いいね。 可愛い〜♪」
・・・落ち着かない。 この時の私の顔は、絶対赤かった。
部屋着を袋に入れられ、興奮気味に「慣れだよ、慣れ! 色白なんだし、こういうのは見せてかなきゃさ☆」と言われた頃には、もう私は居た堪らなくなりぐったりとしていた。
ポンポンと優しく頭を撫でられ、
「印象変わったね。 また来いよ」
と気さくに手を振られ、私は相変わらず照れ笑いで返し、ジローに言われたとおり、上に行くエレベーターに乗った。
“CiRCLE”という店はすぐに分かった。
分かったんだけどーーー・・・、
「いらっしゃいませ。 染谷ユリ様ですね?」
何で、美容室・・・?
逃げ腰状態の私は、引っ張られ、誘導され、されるがままだったーーー・・・。