Little Gang
「ユリ様? 終わりましたよ!! ふふふ、明るい雰囲気に仕上がりました」
そんな声が聞こえてきて、やっと覚醒した。
私、途中から爆睡してたかも・・・。
顔を上げると、目の前は鏡だった。
「いつもと違う・・・!」
ただ単純に驚いた。 だってーーーー・・・、
「ユリ様・・・?」
美容師さんの声に肩をビクッと震わせ、立ち上がって振り返った。
「どうですか? 大人っぽいメイクよりか断っ然いいでしょう? イケイケって感じ? クラブにいそうです♪」
表情もいつもより華やかに見えると絶賛する美容師さんは満足げに笑っていた。
まるで魔法みたい・・・。
髪型はエスクテをつけられたらしく、胸まであって、高い位置で一つに結ばれていた。
メイクやネイルもしてあって、もはや普段の私の面影はどこにもなかった。
私も自然と微笑んでいた。
・・・こんな髪が長いのは久しぶりだな。 確か兄さんは、短い髪よりも長い髪の方が好きなんだったけ。
『たまにはいいかもね』
「ユリ様も楽しくなってきました?」
美容師さんは悪戯っ子みたいに愉快そうにくすくすと笑った。
穢れを知らない、純白の笑顔だ・・・。
『・・・ちょっとだけ』
私もふっと笑って、冷え込む外に出た。
外に出ると、ジローの視線が痛かった。
『ジロー? 大丈夫?』
「・・・うん。 ネコ耳じゃないから、一瞬誰かわからなかったよ」
ジローは、白いジャケットに黒いインナー、デニムのズボンでシンプルだけど不思議とジローにはピッタリ似合ってて清楚な感じでイケてる。
ただ顔が拝見できないのと、狐のお面が浮いて見えるのは残念としか言いようがない。
あ、一応補足として・・・。
ネコ耳キャップは、私のお気に入りのファッションアイテムで、トレンドマークでもある。
『ぷっ。 ジロー、それジョーク? きゃははっ、そんなの言えたんだ〜?』
「あ、喋るといつも通りか」
『じゃ、黙っとく』
「・・・普通にしてなよ。 気味が悪い」
ぶるっと身震いしてジローは前へ歩きだした。
初対面の相手に、失礼な。
んでも・・・あの金茶・・・。
あれ? なんか見たことある・・・誰だっけ?
考えてみても思い出せない。
でもそれとは別になんかこう・・・冷めた印象が誰かに似てる気も・・・。
狐の正体とか思考は、謎すぎて推理するだけ無駄そうだから、これ以上深く考えることはやめた。
聞いてもはぐらかされそうだし、逆ナンだと誤解されてしまうのは面倒だからいっかと思い、他愛のない話をしながらジローについていった。