Little Gang
『どんな事情があっても、私が今までやってきたことは許されることじゃない』
たとえ、傷つくことになったとしても、向き合いたいと、そう思った。
『それでも本能に突き動かされる。 私がやらなきゃいけないと声がする。 ・・・自分では止められないの』
昔から、勉強にしろスポーツにしろ、人一倍一生懸命やらないとダメな気がしてる。
頑張ってないと不安・・・なのかもしれない。
本当はもっとたくさんの人を助けたいのに、どうあっても全部に手は届かないから、理想と現実のギャップがもどかしいっていうか・・・。
基本的に何でも器用にこなす私は、挫折を経験したことが少なかった。
それがひょんなことから家政婦になって、苦手分野の家事をするようになって味わったのは、なんの役にも立てない無力感だった。
自分の限界をわかってて努力するのは難しい。
でも、何もしないで後悔するくらいなら、頑張ってみてから“ムダだったね”って笑い話にしたいんだ。
『でも・・・みんなの手で終われるなら、それ以上の結末はないと思ってる。 みんなに、終わらせて欲しい』
私の代わりなんて、いくらでもいる。
必ず・・・次の私が、同じように立ち上がる。
・・・それがみんなだったらいいって、思った。
染谷ユリにとっての“理解者”は、本来己でしかない。
まわりにはいつも仲間がいたけど・・・心は満たされなかった。
年端もいかない子供から幅広い年代層の哀しみの声に耳を澄ませてきたけど、心を知りたいと思えるような人間には出逢えない。
だけど私の探し求めた・・・理解者と呼べる人が見つかった。
そう、西郷兄弟だ。
ーーーあれは、まだアイジさんの命日に墓参りにアメリカへ訪れた夏のこと。
墓地には人影が六つ。
青々とした緑に囲まれた敷地だが、最も光の差す場所がこの墓地だった。
燦々と降り注ぐ陽の光の下、目を閉じて手を合わせながら祈るカラフルな人影。
墓前に柔らかい色合いの花、ポピーを供えると膝についた砂埃を払って立ち上がる。
穏やかに細められた瞳に浮かんだ涙。
はらはらと・・・惜しげもなく零れ落ちる涙。
感謝と、畏れや憎しみをこれでもかと詰め込んだその涙には、みんなの持って生まれた全ての感情が複雑に絡み合って輝いていた。
この世で命の灯火が消える時、人はきっと、こんな涙を流すのだろう。
でも、なぜか絶望の淵に立ちながら、この世の誰よりも幸せそうに微笑んでいたと思う。
私より弱い人間が私より強く生きてる。
それが、第一印象だった。
みんなはどう見ても“普通”で、特に優秀なわけでもない。
そんな私より弱い人間が、時折、奇妙なほどの意志の強さを見せる。
そのアンバランスさが、ずっと脳の片隅に引っかかり続けていた。
・・・あのときはまだ、それだけだった。
それだけで終わっていれば、きっと私は今のような苦しみを味わわずに済んだのだろう。