Little Gang
『全てが嘘だったと思い込む必要はないよ。 嘘の中にも真実はある』
「え?」
何が正しいかは、自分の目で見極めるべき。
『ハルカくんの大事な人が誰かなんて無粋なことは聞かない。 でも、その人から受け取った優しさや強さは、君にとっては本物だ』
「染谷さん、それって・・・」
『ごめんなさい。 Roseliaに戻ると決めた時、君の知る私はもう死んでるの』
そろそろと手を動かして、ハルカくんの腕に触れる。
冷え切った指先は、思い通りに動かない。
まるで、混乱している私の心のようだ。
「地獄は嫌ってほど見てきた。 僕からしたら、ここはかなりマシな方ってわけ。 でも・・・』
『こんな世界でしか生きられない人間だって・・・この世には、いるんだよね』
ハルカくんにも、守りたい存在がいる。
たとえ折り合いが悪くてもハルカくんがひたむきに感情を向ける、“特別な人”。
しかも、その特別な人はRoseliaに関わる者たちと繋がっている可能性が高い。
誰しもが守りたいと想うその存在が、理不尽な悪意に晒されそうになったとき、ハルカくんはどんな風に立ち向かうのか。
私は生まれたときから強者だった。
出自も、環境も、心の在り方も。
すべてが強き者のそれだった。
だからこそ、弱さに惹かれるのだろう。
黄金が降ったあの日・・・。
荒れ狂った野獣の暴力に心が震えた。
鳥肌が立つほどの恐怖に。
そして・・・。
本物のヒーローに出逢えた歓喜に。
今は理想の世界を見届けることよりも、みんながどう動くかに興味がある。
一体、どうやって私を殺そうとするのか。
私の命に残された最期の時間は・・・。
長くて1年。
短くても、余命1ヶ月のはずだ。
ーーーそれから、しばらくの間。
私が落ち着くまで、ハルカくんはずっと抱きしめてくれていた。