Little Gang
しばらく裏稼業から離れていたけど、引き続き“蜃鬼楼”を調べなきゃいけない。

最近、六花が蜃鬼楼抜けたって噂がある。

その理由がよく分からない。

数多くの伝説を残した蜃鬼楼歴代総長。

ヒロトさんの“探しもの”。

六花に何を願うのか、少し気がかりだった。

・・・でも、久々の午前休だし。

出勤までにはまだ、だいぶ時間がある。

有意義に過ごすにはどうしたらいいだろう。

読みかけの本を読む、惰眠を貪る、いっそ珈琲店でバイトしてる染谷さんを冷やかしに出かけるのも・・・。

そうだ、お菓子でも作ろう。

キッチンは女性以外立ち入り禁止のルールは3ヶ月前に解放されたんだっけ。

携帯を見れば、時刻は10時過ぎ・・・。

糖分は疲れた頭を癒すには効果的だし、ちょうど小腹も空いてきた。

そうと決めたら、僕はさっそく腕まくりをしてキッチンに向かった。


「ハルカ、おはよう」


「おはよ。 何してんの?」


「お菓子を作ってるんだよ」


「・・・そう」


ユウタさんがオーブンで生地を焼いてる間、リビングでペットボトルの水を飲みながら過ごす。

甘い匂いが部屋中に漂っていた。

女子ってスイーツとか好きだし、染谷さんに差し入れでもしようかな。

染谷さんは孤児院の子どもたちのため、いつも夜遅くまで汗水流して働いてる。

ご機嫌取りするつもりはないけど、ちょっとでも喜んでくれるだろうか。

〜♪〜♪

あれ? またメール・・・。


『今日のまかないは先輩の奢り(○´ω`○)ノ』


いつも可愛い顔文字だなあ。


『食べすぎると太るよ』


『うるさい。バカ。後で一発殴る (`‐ω‐´)ムカッ!!』


微笑ましい気分になりながらメールを眺めて、【あとで差し入れ持っていく】と返信しようとする。

・・・けど、染谷さんはアンリさんのお気に入りだと思い出して、メールを打つ手が止まった。

告白現場を目撃されて、告ってきた男はボコボコにされたとか・・・。

そうなると、染谷さん個人に差し入れするのはしばらく控えたほうがいい。

でも、さすがに休憩中にこっちまで来てもらうわけにもいかないし・・・。

というか染谷さんは、独占欲の塊がいるおかげで西郷家の人間には近づけない。


『今日の午後、K地区に用事があったりする?』


『その地区は専門外だよ。 どうしたの?』


K地区で会えれば、さりげなく渡せるかも・・・と思ったんだけど。

また日を改めようかな、と考えたところで僕はふと、ある違和感に気づいた。

なんか、焦げ臭い、ような・・・。


「!!!」


慌てて立ち上がると、再びメールが届く。


『もしかして、何かあった?』


『ちょっと仕事に集中してた。 大丈夫だよ』


心配かけまいとそれだけ返信をして、僕は慌ててキッチンへと向かった。

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