Little Gang

「兄さん、そっちの子は彼女?」


「彼女? 別に興味ないな。 そんなことより・・・しばらく部屋で眠るから、起こさないでくれ」


女の子より睡眠を選ぶのは流石だ。

牛込さんは可愛い顔をしてるとクラスメイトの間では一目置かれているけど、ストーカー気質の子は僕でも遠慮したい。

それにしたって、こんな時間に一緒にいるってことは・・・。


「ねぇ、兄貴。 昨日は五十嵐さんの家に泊まるって約束してくれたけど・・・本当なの?」


「は? 何・・・疑ってるのか?」


「兄さんのことは信用してるよ。 だけど、それじゃカノンちゃんと一緒にいた説明がつかないし」


「はあ」


「ライブ明日だよね? だったら今まで練習してたたんじゃーーー」


「だるい。 外泊の連絡はしただろ」


「うん、でも・・・・」


兄弟のとばっちりを食らわないように、僕と牛込さんは遠巻きに避難していた。

この様子を楽しそうに見ながら。

ヒロトさんとユウタさんのケンカは結局、牛込さんが靴を脱いで中に入り、キッチンに一目散に駆け込んで、兄弟ケンカは不完全燃焼で終了した。


「甘い匂いがすると思ったら、すっごいケーキが出来てる〜♪」


「こんなの食べきれるのか?」


「それを今悩んでたところ」


ちょっと・・・!!

ケーキよりも牛込さんをどうにかしてよッ!

一難去ってまた一難とか勘弁だから。

カオス状態なんだけど・・・。


「なんで? これくらいのサイズだったらカノンちゃん朝飯前だよー」


牛込さんがきゃははーと笑いながら言うと、


「いや、無理でしょ」


とユウタさんにツッコまれてた。


「いけるって♪ みんなも食べるよね? で、残りはカノンちゃんが食べるよ!」


突然の牛込さんの提案。


「は? お前のじゃないから」


僕が冷たい目を向けると、


「なーに、その態度。 感じ悪ーい」


と、しくしく嘘泣きする始末。

食べられる量には見えないからってことでピンチヒッターに補欠採用。

ユウタさんが用意してる間に、こっそり味見をしてみたところ、焦げの香ばしさが逆にいいスパイスになっている気がした。
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