Little Gang
『白猫さん、通報お願い』
「あ・・・お姉さん!?」
通りすがりのお姉さんにギターケースを押し付けられて肩に担ぐ。
言うが早いか、周囲に目をやって走り出すお姉さん。
誰だ・・・神出鬼没すぎる・・・死に急ぐなよ。
犯人とは距離があるし、相手はバイクだ。
俺やユウタならまだしもお姉さんが追いつけるはずが・・・と、思ったところで。
『・・・よっ、と・・・』
お姉さんは車道を走るバイクに飛び乗り、思いきり飛び膝蹴りを喰らわせた。
「ぐっ!?」
ひったくり犯の脇腹に鋭い蹴りが入り、反射的にハンドルから手が離れる。
そして右手は奪ったバッグを未だ掴んだまま。
さらにスピードを出す前となれば・・・。
制御できなくなったバイクが、ロータリーの空きスペースに横転した。
放り出されたひったくり犯は、苦痛に呻きながら立ち上がった。
「くそっ、邪魔しやがって・・・!」
『観念しなよ』
男がポケットからナイフを取り出すと、周囲の人立ちから悲鳴が上がる。
俺は咄嗟に武器になりそうなものを探ろうとして私服であることに気付いて手を止めた。
護身用の銃は銃刀法違反になるか。
海外じゃ銃乱射事件は日常茶飯事だったからな。
つい悪い癖が出る。
誤認逮捕されてからというもの、人の目をより意識するようにはなったけど、暇さえあればケンカに明け暮れてるのは昔から変わらない。
被害にあった女には悪いが・・・手錠を填めらるのは二度と御免だ。
警察には・・・もう関わりたくない。
まずは周囲の安全を確保しないと・・・。
「危険だから下がって! 近づくな!」
手早く通報を終えた俺は、騒然となる周囲を制して前へ出る。
すると。
逃げようとする人波を猫のようにしなやかな動作ですり抜け、お姉さんが犯人へ向かって駆け出した。
「さっきのはテメェの仕業か!」
瞬時に犯人はお姉さんに狙いを定め、勢いをつけて、ナイフを・・・。
「っ、お姉さん!」
『・・・っと・・・』
振り下ろされたナイフを苦もなく避けると、お姉さんは男の腕を取って回り込み・・・。
そのまま、地面に叩きつけた。