Little Gang
「どいてください、警察です!」
「道を開けてください!」
ざわめく野次馬を掻き分けてやってくるこの近くの巡回交番連中にげんなりしてると、お姉さんが小声で耳打ちしてくる。
『逃げるよ』
「ああ。 でもさすがに、この状況だからな」
『だいじょーぶ。 警察には優秀な駒がいるからうまくやってくれる』
ぼやくお姉さんに気が緩みそうになりつつ、俺はふと、口を開いた。
「お姉さん、名前、何?」
『・・・カナリア』
「・・・え? かな、りあ?」
『あ、今のなし、黒猫って呼んで』
カナリア・・・(自称)黒猫と名乗る女。
ルナと同じゆるゆるふわふわなミルクティーベージュ髪は腰辺りまであって、紫メッシュを何本も入れてる。
見た目は派手・・・顔は嫌味なくらいの美人。
ちらりと傍らの黒猫を見やる。
透け感のあるシースルーブラウスに、ダメージジーンズのショートパンツに着崩している黒のジャケット・・・。
色白の肌を引き立てる網タイツはとても扇情的で色気を漂わせてる。
ぼんやりとした視線に、ふわふわとした喋り方。
姉御肌のせいか、大人びて見える。
「兄貴、どうしたの? ぼーっとして」
『早くッ、こっちこっち』
黒猫に腕を引っ張られて人ごみへと突入。
野次馬の波をかき分ける黒猫とユウタ。
身軽・・・慣れてるな・・・芸能人オーラが出てるせいか自然と開けた道ができる。
「映画は?」
「さすが兄貴。 マイペースだなあ。 映画と音楽鑑賞はまた今度にしよう。 今はそれどころじゃないしね」
ハア・・・興味の対象が黒猫になったか・・・。
「俺、眠いし帰る」
・・・無視された。
身を潜めたのは人目につかない路地裏。
・・・ここなら落ち着いて話が出来そうだ。
じゃなくて、本当に睡魔の波がヤバい。