Little Gang
チッーーー。

思わず苛立ちのあまり舌打ちをした。

ユウタも眉間の皺がさっきよりも増えてる。


『前世が飼い猫だったら、首輪なんて噛みちぎってやるのに』


ああ・・・ユリならやりそうだな。


『猫パンチもお見舞いするけど』


傷だらけの指を睨みつけてるかと思えば、えいっと、拳を突き出してきた。

・・・・・・・・。

シーンとする・・・。


『兄さんなりの愛情だと思えば、まだ可愛いものかな。愚痴になったね。 忘れていーよ』


「・・・・・・」


事もなげに告げるユリを見て、俺は微かに目を伏せる。

ユリが助けを求めてないのは、彼女の人となりを知ってる俺にはよくわかってる。

その辺の女みたいにか弱い生き物でもない。

身体は鍛えてるようだし、ひったくり犯を捕まえたように瞬く間に制圧すると思う。

危険を顧みずに立ち向かっていく姿。

見慣れてないから、か。

・・・目の当たりにしたら、動悸がした。

実際に、あれは最善だった。

下手したら周囲に被害が出ていたかもしれない。

迷ってる暇はなかったんだ。

でも・・・ユリは・・・。

自分に執着がない。

それどころか、死に場所を求めてる。

知ってる、分かるよ。

いつかの俺と同じ、空虚な眼差しだったから。
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