Little Gang
今日はもうすぐ高校生になる私のお祝いに、歴代の総長や先輩を初め、族を抜けたかつての同士も集まってくれた。
お昼頃から始まった宴はPM6:00となった今、すでに修羅場状態・・・。
座敷には酒と煙草の匂いが充満し、男性陣は上半身裸で雑魚寝する始末。
てか、宴の前にケンカしたから服に返り血がついて気持ち悪いし汗臭いし・・・一旦お開きにして家に帰ってお風呂入りたい・・・。
てか、酔ったフリして隙あらばキスする(未遂)ってどうかと思うよ?
いちばんうるさいのは歴代のお姫様達・・・。
何やら私と副総長の噂を話してる。
付き合ってないよ・・・距離感近いからそう見えるだけで・・・。
私は恋なんかしないって決めてるんだから。
「ユリさあ、まだ引きずってんの?」
・・・そりゃあ、初恋だもん・・・。
「やめなって、ユリがかわいそうでしょ。アイジさんを超える男なんて、ユリ一生独身になっちゃうよ」
「あーね・・・んじゃ〜反抗期真っ只中の美形ぞろいの息子は?」
反抗期、で済ませていいのかな・・・。
「それもありよりのなし・・・」
なんだそりゃ・・・。
「アタシも、大事に育てた可愛い妹分は、もうちょい独り占めしたいもんねーッ」
先輩まで・・・。
すると、あちこちから「蜃鬼楼のマドンナに指一本触れさせない」だの「赤い糸切ってやるッ」だの、挙げ句の果てには「ユリが男だったらほおっておかない」だの。
束縛激しいッ!! 未成年にお酒勧めないの。
『とにかく! 』
私は隣にいた副総長のリツくんにふわりと微笑んだ・・・。
リツくんは十三代目総長になる。
最前列に立って、みんなを引っ張っていく。
私は総長の座を降りるけど、何かあった時にはすぐ駆けつけるつもりだ。
『蜃鬼楼はみんなにかかってるからね!』
もっともっと、盛り上げてね!
「はいッ!!」
「ユリさんは族を抜けて、どうするんですか?」
『私はまだはっきりとは決めてないけど、とりあえずーーー』
自暴自棄になってる兄弟にお灸をすえて、寂しい思いをさせた分、しっかり愛情をそそいであげよう。
でも、私が家政婦になることは、副総長のリツくんと幹部にしか話してない。
そして私とアイジさんの関係も・・・。
『いろんな世界を見てこようと思ってるよ。本格的にレッスンを積み重ねて、もっといろんな刺激を受けてこようと思ってる』
「ユリの歌声めっちゃ好きッ!!」
「いいじゃん! さすが、十二代目総長だよッ、ユリ」
『ありがとう』
「もう決まってることっていうのはわかってるんだけど・・・何かまだ自分の中で整理できてないんだよな」
リツくん、大袈裟に考えすぎだよ・・・。
「けど、大丈夫だ。 俺には仲間がいるから何にも心配しないで行ってこいよ」
ああッ、リツくんカッコイイ・・・。
ちょっとこっち来なさい。
子供のころみたいに頭、撫でさせて。
私は衝動に駆られるままにリツくんの頭に手を載せて優しく撫でてやった。
『リツくん、行ってきます・・・』
ふふっ、トマトみたいに顔真っ赤・・・。
そして瞳に浮かぶ綺麗な涙・・・。
初めて見た男の人の泣き顔は・・・スッゴクカワイイ。
アイジさんもイケメンだって言われるけどね?
通りすがりの女子中高生が思わず足を止めて振り向いちゃうくらい、やっぱりリツくんもカッコイイ。