Little Gang

「あのさ、見てるだけってわびしくない?」


遠回しに食べないのかよと促す。

なんで?

甘ったるいのは好きじゃない。

どちらかと言えば、苦味のあるものが好きだ。

正直、紅茶よりブラックコーヒー派。

見てるだけでお腹いっぱいだよ・・・。


『それはハルカくんのために用意したもの。 私はハルカくんがおいしそうに食べる姿を見られればそれでいいよ』


「! 染谷さん、今の、まるで・・・」


『どうかした?』


「・・・姉さん、みたいだった」


なんか1人でうなずいて自己完結してる。


「僕がご飯食べるの見ながら、姉さんはいつも笑ってて・・・染谷さんと・・・同じこと、言ってたんだ」


『ふぅ〜ん?』


「自分の幸せより、僕の幸せを願ってくれた」


『うん・・・』


「優しい姉さんだったよ」


『うん』


「ねぇ? 染谷さん・・・口、開けて」


まさか・・・これは所謂、アーンという恋人同士がする定番のやつ・・・デスカ?

勢いよく首を横に振る。

無理。

ヤだ。

恥ずか死ぬ。


『私はいいよ。 ハルカくんが食べて』


「その僕があげるって言ってんの。 人の善意は黙って受け取りなよ」


『ええー・・・』


「甘いものはカロリーヤバいでしょ。 モデルは体型を維持するのも仕事の内だから」


体型を維持するのも仕事の内・・・か。


『じゃあ、お言葉に甘えようかな。 半分こしたらカロリーも半分になるよね』


まったく、ハルカくんは・・・。

でも・・・。

ハルカくんの優しさはしっかり伝わったよ。

じっと見守られる中、パンプキンキッシュを口に入れた。


『おいしい』


「だよね。 甘くて、心の中が満たされる。 こんな気持ち・・・久しぶり」


『そうだね。 私も・・・久しぶりかも』


答える私に・・・またも微笑むハルカくん。

この人はいつから穏やかな顔して笑えるようになったんだろ?

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