Little Gang

「最高の幸せって、どんな時に感じる?」


『・・・最高の幸せ、か』


「僕は・・・今だよ。 染谷さんの近くだと、思い出の中の姉さんが傍にいてくれるから」


『・・・・・・・』


肌身離さず持ち歩いてる青い栞やお姉さんについて知りたい気持ちはあるけど、急かすようなことはしたくなかった。

ハルカくんのタイミングで話してくれるのを待とうと思っていると・・・。


「姉さんのこと、だけどさ・・・」


どう言えばいいのか迷ってるように、ハルカくんは口を開いては閉ざしてを繰り返す。

ハルカくん・・・。

フォークを握っている手が震えてるのを見て、こっちまで胸が締め付けられる思いがした。

もう終わったことだとしても、思い出したくない過去をた口にするのは辛い。

今の私が力になれることは・・・。

ーーーギュウッ

私は震える拳へと手を伸ばし、ハルカくんの手を握りしめた。

カラン・・・。

フォークが手から滑り落ちる。


「・・・!? 染谷、さん・・・?」


私を見た、ハルカくんの目が揺らぐ。

・・・大丈夫だよ、聞いても逃げない。

ずっと君の隣にいるから・・・。

そんな想いを込めて、見つめ返した。


「・・・ありがとう、染谷さん」


ハルカくんは、静かに微笑んでくれた。

その手はもう・・・震えてない。


「・・・前も話したけどさ。 僕にとっては姉さんが大事な人で、その人が犯罪者だったらどうするって聞いたよね?」


『うん』


「姉さんは優秀な医者だけど、失敗しない完璧な人間なんかいなくて・・・」


私は氷のように冷たい手を、温めるように優しく包み込んだ。

ハルカくんの目に光がなくなっていく。


「世の中、暗い側面を探そうと思ったら幾らでも見つけられる。その中の1つが、医療ミスを隠してカルテを偽造する汚職だとしてもね」


私たちの街に猛威を振るう自然災害。

理不尽に人が襲われる事件。

無くならない汚職・・・。

こんな世の中で生きていかなければいけない、未熟で純粋な孤児院の子どもたち。

希望の光すら見い出せない。

どうしようもない世の中でも、この世界は求める人に出逢えた世界でもある。

母なる海に感謝したいくらいだ。

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