Little Gang
「患者に寄り添って命を救ってきた姉さんの掴んだ五十嵐との未来を、1人でも多くの人に祝福してもらいたい。姉さんにはそれだけの・・・幸せになる権利があるから」
『結婚決まってたんだね』
「うん。姉さんの晴れ姿・・・世界中の誰よりも綺麗なんだろうな。 照れ臭いけど、ちゃんと“おめでとう”って伝えようって」
『うん』
「ただそれだけを考えて、前だけを見てきた。悪意を投げつけられても、野次を飛ばされても笑い飛ばしてたよ」
『うん』
「姉さんは必ず帰ってくる。 バカみたいに、そう信じてたんだ」
ふっと表情を緩ませ、でも哀愁を帯びた目でハルカくんはいつものように話し始めた。
「でも・・・姉さんが自殺して、五十嵐は過保護になるし、僕は・・・」
『ハルカくんは?』
「僕の物語は白紙になった。 姉さんとは会えない日々が長かったから、振り返ってみたら思い出なんて微々たるものだし」
ハルカくんは自嘲気味に渇いた声で笑った。
だから、離れていってしまうことに慣れてほしくないのに。
一瞬見えた表情は、“無”に近くて・・・。
全てを諦めているような目をしていた。