ウェディングベル
「玲姉も、もう彼氏出来てもいい頃なのに、全然なんだよ」
「玲は仕事の方が大変なんじゃないか?」
「恋より仕事?私には考えられないけどなぁ」
「玲の恋人は神様なんだよ、きっと」
そういって、小さく笑いながら休憩にと淹れたコーヒーを啜りながら古屋千秋は私の暇つぶしの相手をしてくれた。
そう、神様が恋人。だからちー兄、狙ってもダメだよ。
密かにそんなことを思いながら、私はこの流れを乱さないように、それでも、力を込めず、優しくそれとなく会話を続けた。
「ちー兄は恋より仕事タイプ?」
「そうだな、設計図書いてると楽しいし」
「恋しないの?」
「そうだな…相手が見つかれば、自ずとって感じだな」
そういってカップを置くと、1つ伸びをしてまた設計図へと身体を向けた。
相手は見つかってるよ、気付いてないだけ。ここに居る。早く気付いて。私はここにいるから。
私はカフェオレを飲みながらその鋭く尖った、背中から浮き出た骨を睨みつける。
そんな痛いほどの視線に気付きもせず、古屋千秋はペンを取ると、物差しを片手に、線を引き始めた。
古屋千秋は恋をしない。
誰にも。
私にも。
一生そうだったら、きっと私は歪でも幸せだったかもしれない。