ウェディングベル



約束の日。


私は少しだけおめかしして、古屋千秋を呼びに行った。


二日酔いになると分かっていたから、前日に薬を飲んでおいてよかった。


昨日まで私の頭の中に居座っていた頭痛はいつの間にか姿を消して、気だるさだけが抜け殻のように残されていた。



「ちー兄!」



小屋へと行くと、いつもは居るはずの人が居なかった。


広くがらんと開いたその小屋を暫し見つめて、私は首を傾げた。


こんなにも広かっただろうかと、そんな違和感が出てきたのだ。


いつも古屋千秋が座っている椅子に近づいて、その机の上の設計図を見る。


所々鉛筆の汚れが薄くついていて、古屋千秋の指の辿った跡や、指紋がついている。


その白い紙には一面に几帳面な線が所狭しと並び、船の形を示していた。矢印の傍に数字が書き込まれ、長さなどが書かれている。


これを元に船を作っていくのだろう、白い紙には正面や、側面、上から見た図などが描かれていた。


出来上がったのか、と私は小さく笑いながらその線をなぞった。


私と古屋千秋を乗せて動き出すこの船を思い描きながら、私はこの船で世界の果てでもいけたら良いと思った。












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